ドラフト制度と独占禁止法
せっかくなのでドラフト会議を機に少しお勉強。なにをかくそう、この私、法学部生なのである。
平沢くんの件があったから、楽天ファンにとってはドラフト制度さえなければ…といった感じかもしれない。
では何のためにこんな忌まわしき制度が存在するかといえば、それは戦力の偏重を避けるためだ。もしドラフトが存在しなければ、セリーグでは巨人、パリーグではホークスの一強状態に陥るかもしれない。(ドラフトがあってもホークス一強状態になりつつあるけど)
皮肉にも、楽天はドラフト制度の恩恵を受けている側の球団ということだ。もちろん、わが中日ドラゴンズも。
ドラフト制度によって守られるものがある一方で、侵されるものもある。
それが球団間での自由競争であり、これは独占禁止法の不当な取引制限にあたるのではないかとしばしば問題になるところである。
戦力の偏重を避けるためのドラフト制度が独占禁止法に抵触するなんて、日本語的に矛盾してるよねえ。
独占禁止法って名前変えた方がいいんじゃないのかな笑。
独占禁止法の目的は「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」(独占禁止法1条)
不当な取引制限の定義とか要件はとりあえず置いといて、要するにドラフト制度が無かったら、各球団が新人選手を獲得するために好条件を提示して競争するだろうってことだ。
たとえば、ウチはこんなに給料払いますよーとか、これだけ出場機会を与えますよーとか、全部がFA交渉みたいな感じになるだろうってことだね。
確かにこう聞くと、選手はドラフトのせいでだいぶ損してるなと思う。
じゃあなんでドラフト制度が許されてるかというと、どうやら理由は2つあるらしい。
一つは、雇用契約やそれに準ずるもの、関連するものについては独占禁止法の適用が外れるところ、選手と球団間の契約はきわめて雇用契約に類似しているから。
もう一つは、独占禁止法違反というためには反競争性だけでなく、正当化事由がないことも必要であるところ、ドラフト制度は興行であるプロ野球が戦力の偏重を避けるために必要な制度であるから。
ドラフト制度には賛否両論ありますが、少なくとも日本のプロ野球ではなくなることはないだろうなと思う。
完全ウェーバー制の導入も難しそう。
日本のプロ野球の歴史を振り返ると、ドラフト制度は多くのドラマを生み、世間の注目を集めてきた。(有名なのは桑田清原とか)
プロ野球が興行である以上、こういう注目を集めるイベントは無くせないと思う。
日本は高校野球が人気だから、単に贔屓球団に誰が来るかという観点ではなく、あの甲子園のスターはどこへ?ということが話題になる。
それが公開された中でのくじ引きで決まるっていうんだからみんな注目するよね。
AKBがドラフト会議なるものを採用したらしいけど、プロ野球のドラフトと決定的に違うのはそこ。
野球の場合はアマチュアの段階で既にスターになってるんだ。
法学部生としては、選手の権利はどうなってるんだとか考えるべきなんだろうけど、自分はこのままドラフトは続いてほしい。
ドラフト会議で指名される場面とか、希望球団に入団できない場合の記者会見とかを妄想しながら育ってきた野球少年なもので、やっぱりドラフト会議は毎年ドキドキするんだよね。
参考
スポーツと独占禁止法 西脇威夫